保育士が気付く支援が必要な家庭のサイン

2021.04.04
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保育士が気付く支援が必要な家庭のサイン

家庭と子どもの姿は非常にリンクしています。発達障害などそうでない場合もありますが、多くが家庭での経験や親の姿をトレースしている事があります。今回は2つ事例を挙げながら支援が必要な家庭のサインを見ていきましょう。

ため息

ある男の子はいつも居残り保育でした。それも時間ぎりぎりまで利用する家庭で、お母さんは医療従事者であり、一人で子育てをしていました。その男の子はクラスの中で非常に目立つ存在で、いつも落ち着きがなく手当たり次第に殴る・蹴る・噛むを繰り返していました。お母さんに話を聞こうにもいつも疲れた表情でほとんどしゃべる事はなく、帰りの支度をしている子どもの姿をぼーっと眺めるのみでした。受け答えもあまりなく、「話しかけるなオーラ」が常に張られていたように思います。

ある日、私が居残りの担当になった時の事です。いつものように男の子のみになった保育室。一緒に遊んでいるとインターホンが鳴りました。その瞬間に男の子は大きなため息をついたのです。私はぞっとしました。普通であればお迎えが遅くなったことに怒る。お迎えが嬉しくて荷物は放っておいて駆け寄っていく。といった子どもがほぼ100%である中、その子はお迎えに対してため息をついたのです。

それを見た私はお母さんに思い切って園での様子を全て話した上で、家庭でどのように過ごしているのか聞きました。すると、お母さんは「家ではおりこうですけど」と、返してきました。要するに、子どもは家庭で我慢をしていたのです。家ではいい子を演じ保育園でそのため込んだものを吐き出すというサイクルになってしまっていました。

気付くべきサイン

(1)子どもが集団の場で自分の気持ちを抑え切れなかった

(2)母子家庭であり、母親の表情も乏しい

(3)母親がコミュニケーションを取ろうとしない

不透明な生活

登園時間が毎日、13:00頃。遅い時には15:00に登園するという男の子。当時の園では延長保育が20:15までになっており、お迎えはその時間を過ぎる事も多々ありました。市に提出しなければならない、就労証明や緊急連絡票なども提出がなく、また、保育料なども滞納しがちでした。

母親と話をしようとしても、その場しのぎの嘘ではぐらかし、「明日には納めます。提出します。」と言い続ける状態でした。家庭支援センターなど、関係機関に報告して園だけでなく様々な角度から支援を行えるようにしましたが、年長になってもその状態は変わらないどころか、男の子が母親を守るための嘘をつき始める始末で、いよいよ本格的に児童相談所との連携が必要であると判断した矢先、ある事件が起きました。

その男の子が深夜2:00にコンビニで保護されたのです。原因は夜の仕事に出かけた母親の後を追いかけたという事です。児童相談所が保育園に来て聞き取りを行った末に、男の子は一時保護されたのちに里親に委託されました。母親と離れ離れになる苦しさを考えると私たちに出来たことがあったのではと後悔せずにはいられませんでした。

気付くべきだったサインと必要であった対応

(1)提出物などの管理が出来ない状態だった

一度にいくつもお願いするのではなく、一つ一つ提出してもらうべきだった

(2)嘘でその場をはぐらかす

  裏を取りながら、嘘が言えない状態にしてから本当の事を聞き出していくべきだった

(3)仕事を始めてもすぐに辞めてしまう

  母親と信頼関係を築きながら働きやすい職場や環境を一緒に探していくべきだった

まとめ

〇母親の表情や態度から保育士として感じるものを大切にする

〇決めつけて関わるのではなく、仮定と否定を繰り返して事実を明らかにしていく

〇子どもにどういった影響があるのか見通しや具体的な姿を知らせていく