保育士の残業問題、現状と変化の兆しについて。

2021.03.26
保育園について
保育士の残業問題、現状と変化の兆しについて。

国としても大きな問題である待機児童問題。政府は様々な対策を行っていますが、まだ完全な解決には至っておりません。そもそもの問題の原因はどこにあるのでしょうか? 今回は原因の中でも大きな1つと考えられている保育士の残業についてお話します。

残業の実態

データからでは見えない

なぜ保育士の残業が待機児童の原因の1つと考えられるのか?それは保育士の残業量が非常に多いからです。実際に保育士の退職理由や就業したくない理由として残業が大変という意見は多くあり、そのことが保育士不足を招いています。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の残業時間の平均は月に4〜5時間となっています。この計算に当てはめると保育士の残業は毎日15分くらいとなります。しかし、これでは先程の残業量が多いという意見と一致しません。なぜこのような矛盾が起こるのか?実はここに保育士にとって問題となる「持ち帰り仕事」という実態があります。

持ち帰り仕事とは

保育士の仕事は子どものお世話をして見送ったら終わりということはありません。むしろ子どもを見送った後に様々な業務をやることが多いです。これらの業務は保育園に残ってやることもありますが、自宅に持ち帰って残業することが多いのが現実です。

保護者への連絡事項の作成、保育計画表、行事やイベントで使う道具の工作や準備、こういったものが持ち帰り仕事としては多く、他にもピアノや踊りの練習なども含まれます。

持ち帰り仕事の時間は人によって違いますが、なかには1日4時間という人もいます。月間に換算すると100時間という大きな数字になります。残業代が支払われればまだ良いのですが、残念ながら持ち帰り仕事は実態がわからないので反映させることが非常に難しいです。

通常の残業が反映されないケースも

持ち帰り仕事だけでなく、保育園での残業が反映されないケースもあるようです。定時から退勤するまでの時間で反映されず、休日の行事やイベント時の出勤分のみ残業にカウントするといった保育園もあります。

結果として、保育士は残業量の多さにもかかわらず、正当に残業代が払われていないという状況になってしまい、これが保育士不足を招く大きな要因となっております。

残業が増えてしまう理由

人員不足

大きな理由は人員の不足です。保育士は朝に子どもたちを迎え入れてからは、基本的に子どもたちに付きっきりです。0〜1歳児までは子ども1〜2人につき保育士が1人、3歳以上になると子ども10〜20人を保育士が1人で担当します。

保護者から大切な子どもを預かっている責任もあるので、目を離すことができず、他の事務仕事をやるような余裕はなかなか作れません。補助やフリーの先生がいればフォローをしてもらえるのですが、人員が不足するとそれも叶いません。

事務作業がアナログ

保育園の現場はPCを導入せず、アナログなところがまだまだ多いです。特に園児の連絡帳などは手書きで書かなければならないといった習慣なども根強く残っており、そのことが保育士の負担を高めています。

残業問題への対策

まず自分で変えられる部分は変えていく

全体の環境を変えるのは難しいですが、保育士自身でもできることがあります。

まずは保育士同士のコミュニケーションを綿密にしましょう。役割分担をして、誰かの手が空いている時はサポートをする。事務作業はリスト化して見えるようにすると助け合いがしやすくなります。

また時間のかかるイベント準備は効率を重視。早い段階から準備を少しずつ進めたり、以前使った小道具を再利用したり、保護者にも協力してもらえる部分は協力してもらったりすることで負担を軽減することができます。

こういった経験は大変ではありますが、チームを作っていく上でも重要なので今後のキャリアとしても財産となるでしょう。

残業の少ないところへ転職する

自分のライフワークバランスが崩れてしまうようなレベルでしたら別の職場へ転職するのもひとつの有効な手段です。現在は政府の後押しもあり保育士の働ける選択肢は広がっています。特に院内保育所や企業保育所などは、行事やイベントが少ないこともあり残業の可能性は低くなるでしょう。

また派遣保育士という選択肢もお薦めです。人材派遣会社が保育園との仲介をしてくれるので残業代を削られることはありません。

その他にも保育園によっては持ち帰り仕事を禁止している場所もあります。こういった職場は残業や保育士の働く環境に対して意識が高く、人員も多い確率が高いのでその分働きやすいといえるでしょう。

変化の兆し、保育のICT化

ICTとは「情報伝達技術」のことです。テクノロジーの進化が進み、保育の現場でも事務作業の大幅な効率アップが現在進んでいます。パソコンやタブレットを用いて業務を一括管理。情報共有をオンライン上で行うことで、今まで負担となっていた持ち帰り仕事を大幅に削減することができます。ICT化を導入している保育園は残業を減らせるだけでなく、本来やるべき保育に集中することができるのでパフォーマンスも上がります。

まとめ

保育の仕事はやりがいもあり、責任感も感じられる仕事です。しかしそれは自身の健康あってこそなので無理のしすぎは要注意です。現在は保育の仕事も様々な選択肢がありますので、ぜひ自分のライフワークバランスに合った職場を見つけてください。