知っておきたい感染症の基本
- 2021.03.30
- お役立ち情報
園児たちは感染症にかかりやすく、その理由は免疫力が十分に備わっていないこと、園での集団環境がそもそも広まりやすいことが理由と言えます。
感染症の対策は保育施設にとって、必要不可欠な要素です。今回は感染症に関する基礎知識をご紹介します!
感染症とは
感染症とは、ウイルスや細菌が人に寄生して、宿主の中で増えていき、宿主から宿主へ移っていく病気のことです。
私たちの身の回りには、見えない微生物があらゆるところに潜んでいます。
そしてその微生物も他の生物と同様、生存競争に勝つために増殖しようとしています。この増殖が食べ物の中で行われると、食中毒や腐敗の原因になりますが、人や動物の中で増殖した場合は、疾病を引き起こすことがあります。
これが感染症です。
咳やくしゃみ、発熱、下痢のような症状が現れることが感染症の発症です。
症状が現れるまでの期間を潜伏期といいます。
感染をしても症状が現れないケースもありますが、感染保菌者が気が付かないために、よけいに菌をばら撒く感染源になってしまうことが、しばしばあります。
感染症になる条件
細菌やウイルスなどの病原体が病気を起こそうとする力が、人の抵抗力よりも強くなった場合に感染症が起こります。もともとの病原体の力が強力であった場合、もしくは病原体の数が増えて力を増していった場合に感染症のリスクは高まります。
他にも人の抵抗力が非常に弱っている場合などは、ふだんは何ともないような菌に感染し、病気になることもあります(日和見感染)。
このように感染が成立するには、病原体の強さと、宿主の強さ(感受性)が大きく関わっています。
感染経路
感染症を成立させる条件としてもう1つ、非常に重要なものが感染経路です。
病原体の侵入を防ぐには、その通ってきた道を塞ぐことが必要です。
病原体は4つの感染経路から侵入してくるため、すべてのルートを把握したうえで、対策を行う必要があります。
接触感染
接触感染は最も重要で、頻度の高い感染経路です。
だっこや手をつなぐなど、感染源に直接触れることで感染する場合と、ドアノブや遊具など、汚染された物を介して起こる間接接触による感染があります。接触感染は、体の表面に病原体が付着しただけでは成立しません。
病原体が着いた手で、口や鼻や目をさわる、もしくは遊具等を舐める等によって体内に侵入することで感染が成立します。
また他にも、傷のある皮膚から病原体が侵入する場合もあります。
接触感染の主なものは以下です。
・胃腸炎の原因であるノロウイルスや、ロタウイルス
・咽頭結膜熱や流行性角結膜炎の原因であるアデノウイルス
・手足口病やヘルパンギーナの原因であるエンテロウイルス
・麻しん
有効な対策としては、まず手洗いで清潔を保つこと。正しい手洗いの仕方も重要です。
また固形石鹸よりも、1回ずつ使用できる液体石鹸を使用すること。
さらにタオルは共用にしないで、ペーパータオルを使うとより効果的といえます。
飛まつ感染
感染者が、咳やくしゃみ、会話をした時に、病原体を含む小さな水滴を口から飛ばし、これを近くにいる人が吸い込むことで感染が起こります。
飛まつが飛び散る範囲はおおよそ1〜2mくらいといわれています。
保育施設では特に子ども同士や職員との距離が近く、日頃から親しく会話を交わしたり、 集団で遊んだり、歌を歌ったりするなどの環境にあります。インフルエンザ等の流行が、保育施設の乳幼児を中心に多く見られるのは、このような飛まつ感染を感染経路とするためといえます。
飛まつ感染の主なものは以下です。
・インフルエンザ(接触感染することもある)
・風疹
・マイコプラズマ肺炎
・アデノウイルス
・麻しん
飛まつ感染は、ほとんどの場合飛まつを浴びないことで防ぐことができます。
感染者から2m以上離れることや、感染者がマスクを着用などの咳エチケットを確実に実施することが保育施設での集団発生の予防に有効となります。
空気感染
口から飛び出した小さな飛まつが乾燥し、その原因となっている病原体が感染性を保ったまま空気の流れによって拡散し、それを吸い込むことで感染します。
飛まつ感染の範囲は飛び散る1〜2mであったのに対し、空気感染は室内等の密閉された空間内で起こるので、かなり広範囲といえます。さらにその空間内だけでなく、空調設備が共用の部屋等も含めたすべてを警戒しなくてはなりません。
空気感染の主なものは以下です。
・水痘
・結核
・麻しん
特に麻しんは接触感染、飛まつ感染、空気感染と、感染の幅が広いので注意が必要です。
空気感染に対する対策で有効なのが「感染者の隔離」と「部屋の空気の入れ換え」です。
ただし「麻しん」や「水痘」は、発症者と同じ空間にいた場合、感染を防ぐための物理的な対策はないため、ワクチン接種が有効になります。
経口感染
主に水や食べ物を摂取した際に、汚染された食物や水を直接口に入れることで感染が起こります。
経口感染の主なものは以下です。
・ノロウイルス
・ロタウイルス
・アデノウイルス
・サルモネラ菌
・腸管出血性大腸菌
大切なことは「食材が衛生的に問題ないこと」や「適切な温度で管理されていること」「食材を十分に加熱すること」です。
さらに調理器具の洗浄・消毒をキチンと行うことも重要、特に肉や魚を取り扱った調理器具などは注意をしましょう。
他にも調理従事者の衛生管理や体調管理にも目配せをする必要があります。
このように、生活の中には様々な「見えない敵」が潜んでいます。
感染症から、子ども達を守るためにも日ごろから予防・対処にきちんと取り組んでおきましょう!