各自治体による保育士への手当

2021.03.06
保育園について
各自治体による保育士への手当

昨今の保育士不足は非常に深刻。各自治体はあの手この手で、保育士を獲得しようと動いています。働く土地にこだわりがなければ、その地域独自の取り組みを見て、働く場所を決めるのもアリかも?

求人情報を見る際は、基本給だけでなく手当を見ることが大切です。各自治体によっては、保育士の処遇改善のために手当を設定しているところもあります。自治体独自の手当として一体どのようなものがあるのか、いくつかの自治体を例にご紹介致します。

 

東京都の取り組み

東京都は待機児童問題が深刻なこともあり、保育士の処遇改善に対しては、他の都道府県よりもかなり前向きに取り組みを行っています。

東京都は認可保育園や認定こども園、認証保育園などに勤めている保育士に向けに「保育士等キャリアアップ補助」を実施しています。金額は2015年度には2万3千円の支給でしたが、2017年度には4万4千円までアップしています。これまでは京都府など保育士の給与トップの地域と比較すると遅れをとっていましたが、これによりほぼ同等にまで改善されました。現在、東京都の保育士の平均年収は全国でもトップレベルで、約370万円程度です。

また区によっては、住宅支援制度を導入しています。保育士が住む寮や借り上げ住宅の家賃を、最大8万円まで負担してもらえます。東京都の住宅費は非常に高いため、それを軽減することで、保育士の生活の負担を軽減してくれます。経験5年以下の保育士を対象に、8万2千円を上限とする家賃補助を実施しています。

 

松戸市の取り組み

メディアでも話題となり、一躍有名になったのが松戸市の保育士手当です。

松戸市は東京都や人気の船橋市などと隣接しているため、待遇の良いエリアに保育士が流出していました。保育士の数がこれ以上減少しないための策として松戸手当を導入。人材確保に向けて労働環境を充実させています。

松戸市は国の処遇改善やキャリアパス制度に上乗せして、毎月4万5千円〜7万2千円と、かなりの金額が受け取れます。保育士経験が1~11年目の人は1ヶ月当たり4万5千円。その後19年目までは、年次が上がるごとに約3千円を増額。20年以上のベテランに、上限の7万2千円を支給する制度です。

注意点として、松戸市の処遇改善手当は事業所に支給しているため、保育士が受け取れるかどうかは保育施設によって異なります。保育施設を経由して支給されるので、支給の有無は事前に確認する必要があります。

また、新卒保育士として松戸市内に住む場合には、保育士個人に家賃補助(月額3万円が上限)が給付される制度もあります。さらに10年以上松戸市で勤務した保育士は表彰され、市長が記念品(グルメカード3万円分)を贈呈したりと、キャリアの短い人と長い人、それぞれに向けて環境整備を進めています。

 

横浜市の取り組み

横浜市は全国有数の人口が多い自治体です。隣接する東京都へ通勤・通学する方も多く、自治体間の保育士確保競争の激化もあり独自の対策を行っています。

横浜市は2018年度より、キャリアの長い保育士向けに給与手当を支給しています。横浜市内で勤務して7年以上の中堅保育士全員に向けて、月額4万円を手当として加算しています。勤続年数が長くなり次のキャリアを考え始める頃合いなので、とてもありがたい制度です。

また横浜市が2015年より先駆的にスタートさせた「保育士宿舎借り上げ支援事業」という制度もあります。これは「保育士宿舎借り上げ支援事業」を実施している事業者に新たに雇用された保育士が、採用から10年間家賃補助を受けられる制度です。横浜市の住民票を持ち、横浜市内に借り上げた住宅が条件となります。補助の上限は月額8万2千円まで(敷金、礼金、更新料は対象外)となるので、社会人としての自立を大きくサポートしてくれます。ただし事業者に対する国の補助金の上限は月額8万2千円の3/4(6万1千円)で負担額が生じるため、一部を保育士が負担するというケースもあるので、そちらは事前にチェックをしておきましょう。